色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第101回 あえて「スニペット」とは言わなかったGoogle検索結果削除最高裁決定からインターネット関係訴訟の用語法を考える

2017/07/01

 本コラムは、いわゆるGoogle検索結果削除最高裁決定(最決平成29年1月31日裁判所時報1669号43頁)(以下「本件最高裁決定」といいます。)を参考に、投稿記事削除請求、発信者情報開示請求等のインターネット関係訴訟・仮処分でよく使われる用語を整理しよう、という趣旨です。非常にマニアックかつインターネット関連の分野を取り扱う弁護士・法務担当者・一部の裁判官にしか需要がなさそうですが、役立つ人には役立つと信じて書きます。

 まず、前提として、Google自身は、検索結果の各要素について、原則、「タイトル」「スニペット[1]」「URL」等という用語を使用しています(画像[2][3]

 これらの用語について、本件最高裁決定は、

・「タイトル」は「表題」

・「スニペット」は「抜粋」

・「URL」「表題」「抜粋」の検索結果の3要素を総称して「URL等情報」

 と言い換えて呼称しています。ちなみに、前審である東京高判平成28年7月12日判タ1429号112頁では、「タイトル」「スニペット」という用語が使用されていましたので、本件最高裁決定は意識的に「表題」「抜粋」という言い換えを用いたと思われます[4]

 ちなみに、Googleの検索結果のリンクをクリックすると、リンク先の「ウェブページ」を閲覧することができますが[5]、本件最高裁決定では、やはり意識的に

・「ウェブページ」ではなく「ウェブサイト」

 との用語が使われています[6][7]。ちなみに、「ウェブサイト」という表現は、公職選挙法143条の3(ウェブサイト等を利用する方法による文書図画の頒布)にも登場する立派な(?)法令用語ですが、「ウェブページ」との表現を含む法律・政令・勅令は存在しないようですので、最高裁の言い換えにも理由がありそうです。

 私もそうですが、この手の訴訟では、「スニペット」等の特有の用語について、どのように呼称すればよいのか、困っている弁護士も多いと思います。弁護士によって用語法が異なるので、裁判所もさぞかし書面が読みづらいのではないでしょうか。

 このようなカオスを脱すべく、私たち法律家としては、最高裁によって示された用語法に従って記載すべきだろうと思うのですが[8]、いかがでしょうか。

 以上は現状を前提とした私個人の意見ですが、最高裁は、今後もインターネット関係訴訟において(時にはやや無理のある訳語で)用語の言い換えを続けるのでしょうか。検索事業に関連した用語だけでも、「クエリ」「サムネイル」「SEO」等、言い換えに困る用語が列をなして待機しています[9]

 このままいけば、いずれインターネット関係訴訟の判決文は法律家が読んでも技術者が読んでも意味不明なものになると思われます。私は、技術者や事業者の間である程度一般的であることが訴訟資料から明らかである用語については思い切ってそのまま判決文に使用すべきである、と考えています。


[1] このうち「タイトル」「スニペット」は、法律家の間でも特に用語法が混乱しているように思います。

[2] 出典:https://www.google.co.jp/search?q=%E5%8F%B8%E6%B3%95%E8%A9%A6%E9%A8%93&gws_rd=cr,ssl&ei
=gvJUWZWJFIeO8wWS7pHwB。抜粋、赤い文字・書き込み等は筆者による。

[3] 以上、https://support.google.com/webmasters/answer/35624https://support.google.com/webmasters/answer/34434等。「検索キーワード」については、「検索ワード」との表現を用いる場合も多くあります。

[4] ちなみに、知財高判平成24年11月29日判例秘書(壷プリン事件)の判決文は、スニペットを「検索キーワードが含まれるテキストの抜粋等」と解説しています。「抜粋」だけで裁判所に意味が伝わるかどうか不安な場合には参考にしたい表現です。

[5] この用語法は前審によるものです。

[6] 「ホームページ」等の伝統的表現は、もはや最高裁でも使われていないのか…とショックを受け、判例秘書で検索したところ、最判平成25年1月25日民集243号11頁では「ホームページ」との表現が使われていました。この4年間で相当最高裁の意識が変化したものと思われます。

[7] その他、細かいところでは、検索して結果を表示すること自体は「検索結果の提供」、Googleのbot(ロボット)は「プログラム」(そんな表現をするなら、ほぼ全部「プログラム」だと思うのですが)、クロールは「収集」、キャッシュは「複製」、インデックスは「索引」等と表現されています。クエリについては本件では言い換えられていません。なお、Googleが検索ワードを予測して提案するサジェストは、(一般に調査官解説として知られる)判例時報2328号12頁において「予測」と言い換えられています。

[8]仮に相手方の代理人の用語法と異なり、裁判官に「読みにくいので統一してください。」と言われた場合も、「最高裁の表現です…。」ということで、正統性を主張できそうに思います。

[9]そもそも、これらの用語の多くは、うまく日本語に言い換えられないからこそカタカナで呼称されているように思われます。

執筆者:増田 拓也

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