色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第71回 コーポレートガバナンス・コードと株主総会

2015/11/13

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 上場企業の法務担当者の皆さんにとって、今、最大の関心事は、コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」)ではないかと思います。

 実際、法務担当者の方の中には、ここしばらくコーポレートガバナンス報告書(以下「ガバナンス報告書」)にかかりっきりという方もおられるようです。関心の所在は各社各様でしょうが、とくに経営者の方々に関心が高いのは、経営陣幹部・役員候補の選任・指名の理由、指名・報酬の任意の仕組み(諮問委員会等)、取締役会全体の実効性、取締役・監査役のトレーニング、政策保有株式の保有方針といったところでしょうか。

 コードに対しては「仕事が増える」「余計なお世話だ」という意見もあるかもしれませんが、日頃、日常業務や数字に追われ、「自社の目指すところ」(経営理念)や「意思決定の在り方」を振り返る機会はそう多くないと思います。コード対応を機に、中長期的観点からあらためて自社のガバナンスの基本を議論し直してみるのも大いに意義のあることだと思われます。

 

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 ガバナンス報告書を提出して一段落すれば、次は、来年の株主総会のことも気になる時期かもしれません。

 ガバナンス報告書を踏まえ、招集通知も、個々の役員候補者選任理由など、従来より詳細な記載とならざるを得ない場合[※1]も出てくるものと思われます。

 また、総会当日の説明義務の範囲も気になるところです。コードと説明義務との関係については、本年5月に開催した当事務所の「株主総会に向けた検討会」でもとりあげましたが、概ね以下のような理解でよいと思われます。

① 株主総会は、「会議の目的たる事項」を報告・決議する場であり、会社法上の説
 明義務は、あくまで株主が議決権行使の前提として合理的な理解・判断を行うため
 のものであること。

② 他方、コードは、会社の透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を促すことを通じ

 て「攻めのガバナンス」の実現を目指す、プリンシプルベースのソフトロー(有価
 証券上場規程)であり、それ自体で株主総会の場における特定事項の説明を義務づ
 けるものではないこと。

③ しかし、コードで開示や説明が求められる事項には、役員選任議案など株主総会
 で説明義務の対象となる場合があり[※2]、総会の場でもガバナンス報告書に絡めた
 質問が予想されること。

④ また、会社によっては、従来から、説明義務の対象ではなくても、株主とのコミ
 ュニケーション、IR等の観点から説明に応じてきた事項もあり、その多くが株主
 との建設的な対話を求めるコードと重なると思われること。

⑤ したがって、「コードやガバナンス報告書に関する質問は説明しない」というよ
 うな形式的な対応は適当ではないこと。

 

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 来年の総会に向けた準備としては、「説明義務の対象事項」(説明しないことが決議取消事由にあたる事項)と、逆に「開示してはならないこと」(インサイダー情報や守秘義務のある事項)をあらためて確認する(これは、コードにかかわらず必要なことです。)とともに、提出済みのガバナンス報告書との整合性をチェックする等、あらためて従来の想定問答をブラッシュアップし直す必要があると思われます。

 当事務所では、来年の3月頃を目処に恒例の「株主総会セミナー」を開催する予定ですので、ご活用いただければ幸いです。

 


※1 例えば、参考書類上、「選任理由」の明記まで求められていない社内役員(会社法施行規則第74条、第76条参照)の記載など

※2 ただし、これは、コードによって初めて説明が必要となったのではなく、従来から説明が必要であったものと考えられます。

 

 

 

 

執筆者:鳥山 半六

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