色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第11回 スポンサーと事業再生

2013/01/16

事業再生とその支援について考えてみましょう。

事業は、「ヒト・モノ・カネ・情報」によって支えられているといわれます。このうち、「カネ」が足りなくなるときには、事業に必要な資金繰りに窮し事業を続けることができなくなる局面があります。たとえば、取引先が倒産したことによって、その支払いを当てにしていたのが外れて、一時の資金繰りが苦しくなることがあります。この場合に、交渉により仕入れ先に対する債務について支払いの猶予が得られ、あるいはメインバンクにより融資を受けるなどして資金繰りがつながれば、当面は事業を継続することができ取引先には迷惑がかかりません。
ところが、取引先の協力やメインバンクから融資を受けることができないような場合にはどうなるでしょうか。このような場合に、そのままで事業が継続できなくなると、せっかくの事業がこの世からなくなってしまいます。それでは社会的にも大きな損失になる場合が多いでしょう。
そこでこのような状況で、その事業を引き受けることによって支援する人(スポンサー)がいれば、その事業は存続することができます。ここにスポンサー(事業の支援者)による支援が重要であることになります。
事業を新たに立ち上げ、軌道に乗せるには時間がかかります。スポンサーとしては、その事業に関心があれば、直ちに事業を承継することができますので、経営判断によりこれを決断することが有益な場合があります。ただし事業を承継するための取得資金は,できるだけ少なくてすむように考えるでしょう。あるいは、事業を取得するために支出する金額はなるべく抑えて、その後の事業の維持改善費用に支出したいと考えることも多いといえます。これに対して、支援を受ける事業者としては、多額の債務を抱えて身動きができなくなっている状況にあることが多くいわば自力では事業を継続することができないので、その債務を返済するために少しでもスポンサーからの支援金額が多いことが必要になります。
ここで、支援金を巡って支援をする側と支援を受ける側(あるいはその債権者)とでいわば利害が衝突する場面があります。債務者に対して支払いを求める金融機関などの債権者からすれば、当初の支援金額が多い方が、弁済資金が多くなることから、歓迎されることになります。これに対して、債権者の中でも、たとえばゴルフ場経営会社、学校の生徒など一定のサービスを受けたいと考えているような債権者からすれば、当面の支援金額だけではなく、今後の施設維持改善資金が安定的であることや、同じ事業の経営に当たったことがあるか、すなわち経営手腕に優れているかなどが重視されることとなるでしょう。
このように、複数のスポンサー候補がある場合には、どの候補者がもっとも望ましいスポンサーなのかを決めることは、容易ではない場合もあります。
以上「カネ」に困ったときの資金支援について見てきましたが、事業再生の場合に見落としてはならないのは、「ヒト」です。なんといっても、その事業が継続できるかどうかは、有能な従業員によって支えられているかどうかにかかっているといってよいのです。
事業が苦しくなってくると、退職者が続いたりしてキーマンとなる「ヒト」がいなくなることがあります。スポンサーとしては、このような点をよく見て支援するかどうかを決める必要があるでしょう。また支援を受ける債務者としては、一番苦しい中を支えてくれた従業員の職場を確保するという意味でも、スポンサーに対して正確な「ヒト」の情報を提供して、支援を求めることが必要でしょう。
さらに、「ヒト・モノ・カネ・情報」という点で傷を負った事業は時間が経過すればどんどん価値が毀損されていきます。したがって、事業再生はスピードが生命といえます。
またスポンサーを求める側、スポンサーになる側双方にとって、幸運な事業再生が実現できるかどうかは、このような作業に関わる関係者全員が共通の理解と情熱によって支えられるかどうかにかかっていることも、強調されてもされすぎることはないでしょう。
以上のように、スポンサーによる支援を巡っても、事業者を取り巻く関係者によって、それぞれの利害が渦巻いているのですが、事業を継続するという点を共通の一致点として手続きを進めていくことが重要です。

執筆者:森 恵一

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