色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第103回 アマゾン(Amazon)とMFNと私(中編)

2017/07/07

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この点、本件において、公正取引委員会が示した懸念としては、以下が挙げられています。

 ① 出品者による他の販売経路における商品の価格の引下げを制限するなど、出品者の
  事業活動を制限する効果

 ② 競争上の努力を要することなく、当該電子商店街に出品される商品の価格を最も安
  くし、電子商店街運営事業者間の競争を歪める効果

 ③ 出品者向け手数料の引下げが、出品者による商品の価格の引下げにつながらなくな
  るなど、電子商店街運営事業者のイノベーション意欲や新規参入を阻害する効果

 このうち、①に関しては、どの市場に着目しているのかハッキリとは分かりませんでした。

 他方、②③に関しては、いずれも電子商店街運営事業者間における出品者(売り手)獲得競争又は利用者(買い手)獲得競争を市場と捉えたうえで、上記の競争減少、他者排除効果について述べたものであると思われます。そこで、以下では主にこの点について検討してみます。

(3)  競争減少、他者排除効果について、論説1、2によれば[1]、電子商店街運営事業者間の競争においては、概ね次の6点を満たすほど生じやすいと整理できそうです。これら6点は規範でも何でもありませんが、考え方を整理する上で有用と思われるため、本件の事情を分かる範囲で、「⇒」以下でサクッと当てはめてみます。

ア MFN条項を課されている者(出品者)の数が多く、これらの者の電子商店街市場におけるシェアが高い
⇒全て(一部契約についてはほぼ全て)の出品者に適用される出品関連契約に価格等の同等性条件が盛り込まれていたことからすれば、マーケットプレイスのみで販売する出品者及びマーケットプレイスと他の販売チャネルをいずれも利用している出品者(換言すれば、”マーケットプレイス以外でしか販売しない出品者”を除く全ての出品者)にMFN条項が課されていたと考えてよい。アマゾン社の国内売上高が1兆円を超えたとのことで[2]、そのうちマーケットプレイスでの売上も一定割合を占めているため、出品者の数が多く市場シェアも高いのではと推測される

イ MFN条項を課されている出品者(売り手)にとって対象商品の重要性が高い
⇒対象商品の重要性が高い出品者(例えばマーケットプレイスでしか自社商品を販売していない者)も、逆に低い出品者(例えば自社サイトでの直販やマーケットプレイス以外の電子商店街での出品が中心とする者)もいると思われるが、前者にとっては妥当する

ウ MFN条項を課しているプラットフォーム事業者の市場における地位が高い
⇒アマゾン社(マーケットプレイス)の電子商店街運営事業者としてのシェアは相当高いと思われるが(楽天市場とどちらが高いのかはよく分かりませんが、私的な感覚としてはYahoo!ショッピングよりは高いような気がします)、具体的な数字は不明。ただ、公正取引委員会が私的独占ではなく拘束条件付取引を懸念して審査していたということは、50%程度に及んでいるということはおそらくないのでしょう

エ 重要な取引条件について制限がなされている、MFN条項の類型が遡及型[3]、追加優遇型である等、実効性が大きい内容になっている
⇒価格についての制限ゆえ、最も重要な取引条件である。MFNの類型については、残念ながら実際の条項を確認する前にアマゾン社が削除したため遡及型かどうかは不明ながら、公正取引委員会の認定によると追加優遇型については設定されていた模様(なお、どのような出品者に優遇型が設定されていたのか、通常型との割合等はあいにく不明です)

オ 出品者(売り手)が他のプラットフォーム事業者にどのような条件で出品しているか、プラットフォーム事業者が監督することができる
⇒出品者が他の電子商店街を利用している場合、インターネット上で販売価格が表示されているはずのため、アマゾン社はその気になれば容易に把握し得ると思われる(ただ、出品商品数が膨大すぎるため、実際にどのような仕組みでこれをやるのかはよくわかりません)

カ MFN条項の提案や推進を課している者(プラットフォーム事業者)が行っている
⇒想像するにアマゾン社が提案・推進したのでしょう(もし違っていれば大変申し訳ありません)

 以上の簡易な当てはめから敢えて乱暴にまとめると、特にマーケットプレイスへの依存度が高い出品者との関係では、本件の価格等の同等性条件には一定の競争制限効果(他者排除効果)が認められ、追加優遇型が適用されている場合は尚更妥当するように思われます。

(4) なお、念のため出品者(売り手)間の協調促進効果について見ると、論説2によれば[4]、プラットフォーム事業者が有力である等ゆえにMFN条項が取引の広範な部分に適用されている、出品者(売り手)にとって重要な事項を対象としておりかつ実効的に課されている場合は生じやすいとされており、考慮要素は基本的に(3)と同様ですので、本件においても一定の協調促進効果を認めてよさそうです。

 

(後編へ続く)

(前編はこちら) 

[1] 論説1p10~12、論説2p43~44

[2] 2017年6月28日付け日本経済新聞朝刊より。

[3]  契約締結後に第三者に対して有利な条件で取引がされた場合、遡及的に自らにも当該条件を適用するタイプのMFN条項。

[4]  論説2(下)p44~45

執筆者:西本 良輔

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