色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第97回 遺産分割をめぐって Part5 寄与分について

2017/04/28

1 寄与分について

相続人の中には、生前、被相続人(亡くなった人)の事業に特別に協力したり、療養看護に尽力した人もいます。このような被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした相続人の相続分は、他の相続人よりも増加させることが実質的に見て公平です。この制度を寄与分[1]といいます。

遺産分割協議においては、自己の取得分を少しでも増加させるため、前回の特別受益[2]と同様、他の相続人以上に特別の寄与をしたと主張することがよく行われます。そこで、今回は、寄与分がどのような場合に認められるか、寄与分の算定はどのように行われるか述べてみたいと思います。

 

2 寄与分を主張できる者

寄与分の主張ができるのは共同相続人に限定[3]されています。

現実の遺産分割においてよく問題とされるのは、長男の嫁(相続人ではない)が療養看護を尽くした場合に、長男の寄与分として認められるかということです。このような場合は、長男に代わって(履行補助者として)療養看護を行ったと認められることが多いようです。配偶者だけではなく、相続人の子供やその配偶者が行った場合も同様です。

また、孫やその配偶者が寄与行為を行った後、子供が死亡し、孫が代襲した場合も同じです。この場合には、子供(親)の寄与行為も主張できると考えられています。

 

3 寄与分が認められる要件

①寄与行為が、「特別の寄与」であることを要します。
相続人は、被相続人と一定の身分関係を有しています。したがって、その関係から通常期待されるような行為は、特別の寄与とは言えません[4]。その相続人の相続分を増加させるに足りる程度の特別の貢献が必要とされています。

②寄与行為によって、被相続人の財産が維持ないし増加したことを要します。
維持とは、財産の減少が阻止されたことをいいます。したがって、財産の維持や増加に結びつかない精神的な援助や協力は、寄与に該当しません。

③寄与行為と財産の維持・増加との間に,因果関係が必要です。
現実には、寄与行為の存在を立証することが困難なこともありますし、因果関係が明らかでないことがあります。相続人の行為の後、被相続人の行為で財産が増加した場合や、逆に事業に失敗したような場合には、寄与が認められないことになります。

 

4 寄与の態様
大きく分けて、家事従事型、金銭等出資型、療養看護型、扶養型、財産管理型に分けられます。

①家事従事型
民法904条の2第1項にいう被相続人の事業に関する労務の提供に該当する場合です。この事業の典型例は、農業や商工業です。特別の寄与といえるためには、無償性(他の従業員の給与との差がどの程度か)、継続性(従事期間がどの程度か)、専従性(事業に専従していたか)、身分関係(協力扶助義務、扶養義務、互助義務などの範囲を超えているか)などが判断要素となります。また、寄与行為がなされた当時の社会通念や家業の形態なども考慮されます。
標準的算定方式は以下のように考えられています。
寄与分額=寄与相続人の受けるべきであった相続開始時の年間給付額×(1-生活費控除割合)×寄与年数

②金銭等出資型
民法904条の2第1項にいう被相続人の事業に関する財産上の給付に該当する場合です。事業用の不動産の贈与やその購入資金の提供などが典型例です。無償であることのほか、出資の効果が相続開始時まで残存していることが必要です。
標準的算定方式は以下のように考えられています。
寄与分額=相続開始時の不動産価額×(寄与相続人の出資金額÷取得当時の不動産価額)

③療養看護型
民法904条の2第1項にいう被相続人の療養看護に該当する場合です。自ら療養看護する態様と第三者に療養看護させてその費用を負担する態様があります。無償性、継続性、専従性などが考慮されますが、身分関係に基づく協力扶助義務との関係で、かなり判断は微妙になります。
標準的算定方式は以下のように考えられています。
寄与分額=付添婦の日当額×療養看護日数×裁量的割合[5]

④扶養型
民法904条の2第1項にいうその他の方法に該当する場合です。自ら引き取って扶養する態様と扶養料を負担する態様があります。無償性、継続性が考慮されますが、扶養義務の存否が大きな判断要素です。
標準的算定方式は以下のようにと考えられています。
寄与分額=(現実に負担した額ないし生活保護基準による額)×期間×(1-寄与相続人の法定相続分割合[6]

⑤財産管理型
民法904条の2第1項にいうその他の方法に該当する場合です。被相続人の不動産の管理や売買交渉、立ち退き交渉などを行って、被相続人の財産の維持に貢献したと主張するケースが典型例です。無償性、継続性が考慮されます。
標準的算定方式は以下のようにと考えられています。
寄与分額=第三者へ委任した場合の報酬額×裁量的割合
5 寄与分の算定

寄与分は相続人全員の協議によって定めるか、できないときは、家庭裁判所が、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定めることになっており[7]、具体的には、相続財産に対する割合として定める方法、寄与分を金額として定める方法などがあります。

現実の審判では、寄与分として割合で認定されるのが約8割、金額での認定が約2割とのことです。寄与分が10%未満の場合は金額認定が多く、10%以上になると割合認定が多くなっているようです[8]

 

6 寄与分を定める手続

寄与分は、遺産分割の調停の中で主張されることが多いのですが、共同相続人の合意が成立することはあまりありません。そこで、家庭裁判所が決めることになりますが、調停の過程で寄与分の主張をする場合には、遺産分割調停の申立も合わせてしなければなりません[9]

調停が不調になれば、審判の申立があったものとみなされる(家事事件手続法272条4項)ことになっているため、審判によって決定されることになります。

 

遺産分割手続において寄与分が問題となるような場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。

以上

 

 

[1]  民法904条の2・農家や自営業者の相続の場合などで、後継者とその他の相続人との実質的公平を図る観点から判例が定着し、昭和55年に民法の改正で取り入れられたものです。

[2]  遺産分割をめぐって Part 4 特別受益について

[3]  民法904条の2第1項

[4]  夫婦間の協力扶助義務(民法752条)や親族間の扶養義務(民法877条)の範囲内の行為は,特別の寄与とはいえません。

[5]  身分関係、病状、看護の専従性の程度、看護のため相続人の得られなかった利益などを総合考慮して、寄与分として相当と定められる割合で、0.5から0.8が一般的。

[6]  「1-寄与相続人の法廷相続分割合」を、裁量的割合により調整することも多い。

[7]  民法904条の2第2項

[8]  司法研修所編・遺産分割事件の処理をめぐる諸問題271頁

[9]  民法904条の2第4項、また、家庭裁判所から寄与分の申立期間を定められることも多いようです。家事事件手続法193条

執筆者:中村 隆次

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