色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第60回 いわゆる5年ルールの緩和について

2015/04/01

 平成24年8月に労働契約法の一部改正により,有期雇用労働者に関するいわゆる5年ルール(平成25年4月1日より同一使用者との間で有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は,労働者から使用者への申込により,期間の定めのない労働契約に転換される制度)が導入されました。会社にとっては非常に大きなインパクトのある改正で,各社,5年ルールへの対応に苦慮されていると思います。

 

 本年(平成27年)4月に5年ルールの一部を緩和する法律(「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」)が施行されました。対象者は①5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務に従事する高収入(年収1075万円以上)かつ高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者,②定年後に同一事業主または特殊関係事業主に引き続き雇用される有期雇用労働者です。厚労省は,「高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者及び定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者が、その能力を有効に発揮し、活力ある社会を実現できるよう」にするとのことですが,要は5年ルールは会社にとって使いにくいものになっているので,5年ルールを使ってまで保護しなくても働き口があるような高収入かつ高度な専門的知識を有する人や5年ルールを適用してまで保護する必要性に乏しい65歳以上の人については,5年ルールの対象外にしようという考え方です。特例の効果としては,①の者については,一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間(上限10年),②の者については,定年後引き続き雇用されている期間は,無期転換申込権が発生しないこととなります。但し,特例の適用に当たっては,事業主は対象労働者に応じた適切な雇用管理の措置に関する計画について厚生労働大臣から認定を受ける必要があります。詳細な内容については厚労省作成のパンフレットをご参照下さい http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000075676.pdf

 

 なお,1年前(平成26年4月1日)にも5年ルールを緩和する法律(「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」)が施行されています。これは大学等及び研究開発法人の研究者,教員等については無期転換申込権発生までの期間を5年から10年とするものです。

 

 5年ルールには様々な意見があります。非正規社員の保護というと「正規社員への登用」ばかりに目が行きがちですが,その施策を進めることによって逆に雇い止めを誘発して非正規社員という地位も奪われてしまうということにもなりかねません。5年ルールは平成25年4月1日以降の契約から適用されますので,平成30年4月にはどのような問題が起こるのでしょうか。会社によっては平成25年の時点から5年後を見越して対応しているところもありますが,「平成30年になって考えればいいや」と考えている会社もあるようです。何らの方策を講じずに平成30年を迎えて,有期雇用労働者が転換権を行使して無期雇用労働者になれば,会社の人員計画に大きな狂いを生じることになってしまいます。無期雇用労働者に転換されるのは構わないが,適用される就業規則は正社員とは別のものにしたいと考える会社もあるはずです(何の方策も講じないと正社員に適用される就業規則が適用されることにもなりかねません)。平成30年を迎えるにあたって,今の段階から様々な準備・検討を行う必要があると考えます。

執筆者:田辺 陽一

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