色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第40回 セクハラ指針の改正

2014/05/12

1 「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下,セクハラ指針といいます)が改正され(厚生労働省告示第三百八十三号),平成26年7月1日に施行されます。

告示の内容は,まるで高裁判決のようで(○○の後に××を挿入,△△を削除して・・・)告示だけを読んでも改正内容はよく分かりませんので,以下のとおり分かりやすくしてみました(棒線部分が追加部分です)。

「(前略)

2 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容

(1)職場におけるセクシュアルハラスメントには、職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)と、当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)がある。なお、職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものである。

(中略)

3 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容

事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、雇用管理上次の措置を講じなければならない。

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければならない。

なお、周知・啓発をするに当たっては、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要である。その際、セクシュアルハラスメントの発生の原因や背景には、性別役割分担意識に基づく言動もあると考えられ、こうした言動をなくしていくことがセクシュアルハラスメントの防止の効果を高める上で重要であることに留意することが必要である。

イ 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

(方針を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例)

① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ることを内容と併せ、労働者に周知・啓発すること。

② 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ること並びに職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。 

③ 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ること並びに職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。

(2)相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならない。

(中略)

ロ イの相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。例えば、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクシュアルハラスメントが生じるおそれがある場合等が考えられる。

 (中略)

(3)職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

 (中略)

ロ イにより、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者(以下「被害者」という。)に対する配慮のための措置を適正に行うこと。

(措置を適正に行っていると認められる例)

事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。

法第18条に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。

 イにより、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置及び被害を受けた労働者(以下「被害者」という。)に対する措置それぞれ適正に行うこと。

(措置を適正に行っていると認められる例)

① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるセクシュアルハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。併せて事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復等の措置を講ずること。

② 法第18条に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。

 改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。

 (後略)                              」

2 改正内容について

(1)同性への性的言動もセクハラに該当

セクハラ指針の改正前でも同性に対する性的言動もセクハラに該当すると考えられていましたが,改正セクハラ指針においては「職場におけるセクシュアルハラスメントには,同性に対するものも含まれるものである。」と明記されました。

同性間のセクハラというと同性愛を想像されるかもしれませんが,それだけではなく,例えば嫌がる部下を風俗店に連れて行く,飲み会で性体験について無理矢理語らせるなどのことはセクハラに該当します。

(2)性別役割分担意識に基づく言動がセクハラの原因や背景になっていることについての周知・啓発

セクハラに関する「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」のために,例えば,セクハラに関するパンフレットを作成したり研修を行うことがあると思います。その際,セクハラの内容だけではなく,性別役割分担意識に基づく言動がセクハラの原因や背景となっていることについても従業員に周知・啓発すべきということになりました。

例えば「お茶くみは女性の仕事」,「女性は職場の花」,「(名前で呼ばずに)うちの女の子」「(飲み会で)女性は上司の横に座ってお酌して」などの発言が職場内で横行しますと,他の従業員の意識にも影響を与え,職場全体においてセクハラの起こりやすい環境が醸成されることになってしまいます。このような性別役割分担意識に他の従業員を性的な関心・対象と見る意識が加わるとセクハラが起こってしまうと考えられるのです。

(3)相談対応すべき範囲の例示

相談窓口が相談に応ずるべき「職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合」の例として,「放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクシュアルハラスメントが生じるおそれがある場合等」が明示されました。

(4)被害者に対する事後措置について(メンタル対応を追加)

これまで,セクハラの事実が確認された場合の事後措置について,行為者及び被害者に対するものが1項目にまとめて記載されていましたが,被害者に対する事後措置の重要性から項目が独立のものとなりました。また,セクハラによりメンタル不調を来す従業員が多いことから,事後措置の例として「管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応」が追加されました。

3 以上のとおり,今般のセクハラ指針改正はこれまでセクハラに関して述べられていた一般的なことを明文化したものであり,大きな改正ではありません。ただ,就業規則の規定,セクハラパンフレット,または相談窓口のマニュアル等の修正が必要となったり,セクハラ相談があった場合の対応の際には改正内容を意識しておく必要がありそうです。

                                   以 上

執筆者:田辺 陽一

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