色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第37回 「消費税8%分還元セール」と「8%還元セール」の違い

2014/04/01

1 消費税転嫁対策特別措置法の概要

 平成26年4月1日より消費税が5%から8%に引き上げられました。それに先立ち、平成25年10月1日、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(以下では「消費税転嫁対策特別措置法」といいます。)が施行されました。

 この消費税転嫁対策特別措置法は、消費税増税分が適正に価格に転嫁され、立場の弱い事業者が不利益を被ることのないように、大きく分けて以下の4つの特別措置を設けています。

(1)消費税の転嫁を拒否するなどの行為を禁止する措置

   例)減額や買いたたきの禁止

(2)消費税の転嫁を阻害するような表示を禁止する措置

   例)消費税を転嫁していない旨の表示の禁止

(3)消費税法に基づく総額表示義務を免除する措置

   例)「税抜価格」の表示を許容する措置

(4)転嫁及び表示カルテルを独占禁止法の適用除外とする措置

   例)消費税の転嫁の方法の決定に係わる共同行為を許容する措置

 本コラムは、上記4つの特別措置のうち(2)「消費税の転嫁を阻害するような表示を禁止する措置」(以下では「本措置」といいます。)について、「消費税8%分還元セール」と「8%還元セール」という2つの表示を例にしながら非常に簡単に解説を加えるものです。

2 消費税の転嫁を阻害するような表示を禁止する措置の概要

 本措置が設けられたのは、あたかも消費者が消費税を負担していない又はその負担が軽減されているかのような誤認を消費者に与えないようにするとともに、納入業者に対する買いたたきや競業する小売事業者の消費税の転嫁を阻害することにつながらないようにするためであると説明されています※1

 本措置により禁止される表示は以下の3つです。

   ①取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示

   ②取引の相手方が負担すべき消費税を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税
との関連を明示しているもの

   ③消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって②に
揚げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの

 しかし、これらの説明だけでは、実際にいかなる表示が禁止され、いかなる表示が許容されるのかを判断することが難しいのは言うまでもありません。そこで、必ず参照しなければならないのが、関係省庁が策定・公表するガイドラインです。ガイドラインには、どのような表示が禁止され、どのような表示が許容されるのかについて具体例が示されていますので、条文の趣旨や文言に加えてガイドラインに示された具体例を参考にしながら個別具体的な判断をすることになります。

3 「消費税8%分還元セール」と「8%還元セール」の違い

 本措置についての消費者庁ガイドライン※2によりますと,上記2②「取引の相手方が負担すべき消費税を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの」の具体例として「消費税8%分還元セール」が挙げられています。確かに,この「消費税8%分還元セール」の表示は,対価から消費税分を減ずる表示であってかつ消費税との関連も明らかであり,上記2②の表示に該当することはあまり争いのないものと思われます。

 一方,同ガイドラインによりますと,「8%還元セール」は,宣伝や広告の表示全体からみて消費税を意味することが客観的に明らかな場合を除いて,たまたま消費税率と一致するだけの表記として本措置では禁止されないとされています。

 ここに,標記『「消費税8%分還元セール」と「8%還元セール」の違い』が明らかとなりました。その違いとは,本措置によって禁止されるか否かの違いであり,「消費税8%分還元セール」は禁止される一方,「8%還元セール」は原則として禁止されないというわけです。

 上記二つの違いは,消費税との関連性が明示されているか否かという点に尽きるのですが,現場の小売業者や消費者の目線で何が違うのかという疑問について私は答えを持っておりません。

 このような違いが生じたのは,消費税転嫁対策特別措置法の法案の審議段階において消費税と明記されていない表示も禁止の対象となりうる旨の答弁がなされたことに対し質疑が紛糾し,小売業界も禁止される表示があいまいだとして非常に反発したためだと言われています。このような経緯を経たことから考えると,現場の小売業者や消費者の目線で何が違うのかという疑問に対する答えはそもそも存在しないのかもしれません。


※1 消費者庁「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方」(http://www.caa.go.jp/representation/pdf/131010_guide_shouhi.pdf

※2 同上

執筆者:有岡 一大

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