色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第3回 高年齢者雇用安定法の改正により全員を65歳まで雇用しなければならない?

2012/10/11

高年齢者雇用安定法が改正され,平成25年4月1日に施行されます。

大きな改正点の1つが,改正前は継続雇用制度を導入する場合でも労使協定により基準を定めた場合は希望者全員を継続雇用の対象としないことも可能であったのですが,改正後は,継続雇用制度を導入する場合でも原則として希望者全員を継続雇用の対象としなければならないということです。多くの会社が労使協定によって基準を定めて継続雇用の対象者を限定しており,「来年4月1日以降は全員を65歳まで雇わなければならないのか・・・」と思われているかもしれません。しかしながら,必ずしもそういうわけではありません。

改正高年齢者雇用安定法には,労使協定により継続雇用の対象を限定することに関する改正前の法第9条2項に関して,以下のとおり経過措置があります。

「この法律の施行の際現にこの法律による改正前の第9条第2項の規定により同条第1項第2号に掲げる措置を講じたものとみなされている事業主については、同条第2項の規定は、平成37 年3 月31日までの間は、なおその効力を有する。この場合において、同項中『係る基準』とあるのは、この法律の施行の日から平成28年3月31日までの間については『係る基準(61歳以上の者を対象とするものに限る。)』と、同年4月1日から平成31年3月31日までの間については『係る基準(62歳以上の者を対象とするものに限る。)』と、同年4月1日から平成34年3月31までの間については『係る基準(63歳以上の者を対象とするものに限る。)』と、同年4月1日から平成37年3月31日までの間については『係る基準(64歳以上の者を対象とするものに限る。)』とする。」

平成25年4月1日以降は,原則として希望者全員を継続雇用の対象としなければなりませんが,上記の経過措置によれば,例えば平成25年4月1日に60歳の従業員との間で1年の継続雇用契約を締結したときでも(この際には労使協定に定める基準による選別はできません),同契約の満了時(平成26年3月31日)に同従業員が61歳になっていれば,同契約を更新するか否かを決定する際に労使協定に定める基準によって選別することができるということになります。非常に分かりにくい条文の書き方になっていますが,厚生労働省のHP解説においては分かりやすく図示がされていますのでご参照下さい (http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/

koyou/koureisha/topics/dl/tp0903-gaiyou.pdf の最終頁)。

上記の経過措置により,60歳から老齢厚生年金が支給されない社員について,同年金が支給されるまでの間、希望者全員の再雇用を企業に義務づけ、収入に空白期間が生じることのないようにしています(逆に言えば,老齢厚生年金が支給される年齢になれば労使協定による選別を行っても構わない)。

なお,上記の経過措置が使えるのは,改正法の施行(平成25年4月1日)の際に継続雇用に関する基準を労使協定で定め,当該基準に基づく制度を導入している事業主に限られますので注意が必要です。

今回の改正は,年金制度に関する目先の綻びを企業の犠牲のもとで取り繕ったものという印象は否めません。日本経済の発展に大きく寄与されてきたこれらの世代の方々の働きに感謝し,これに報いるべきであるのは勿論ですが,若者からすれば,将来,年金がもらえるかどうかも分からない中において,「60歳以上の人がこれ以上,会社に居続けることになれば,そのしわ寄せは若者層に及ぶ。日本経済の発展とともに『いい思い』をしてきた世代よりも,夢が見にくい若者世代のことも少しは考えて欲しい。」という思いがあるのではないでしょうか。本改正のみならず同じような思いを抱かざるを得ない場面が増えていると感じるのは私だけでしょうか。

 

以 上

執筆者:田辺 陽一

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