色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第156回 令和3年特定商取引法改正の概要及び実務対応

2022/09/13

1 はじめに
 令和3年6月9日、「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」が衆参両院において可決成立しました。悪質商法による消費者被害を防止し、消費者の被害回復を目指すための法改正ですが、この法改正により、特定商取引に関する法律(以下では、「特定商取引法」といいます)が改正されました。
 改正された特定商取引法は、それ以前に施行済みの一部(送り付け商法対策)を除き、令和4年6月1日から施行されていますので、適用対象者は法改正への対応を完了していると思われます。しかし、特定商取引法の解釈が明らかではなく、判断に迷うと思われる点もありますので、特定商取引法の主要な改正点を説明した上で、実務対応という観点から改正法対応のポイントについて見ていきたいと思います。なお、分量の関係上、本コラムでは、適用対象者の多い通信販売に限定して言及します。
 

2 法改正の概要
 ⑴ 広告における表示事項の追加等
   通信販売についての広告を行う際、以前から法令に定められた事項(代金の支払時
  期、支払方法、商品の引渡時期等)の記載が必要でしたが、今回の法改正で、申込み
  の期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容も記載することとされました
  (特定商取引法第11条第4号)。例えば、期間限定販売の様に、一定期間を経過す
  ると商品を購入できない場合がこれに当たります。一方、個数限定販売のように期間
  に関係しない限定や、期間限定値引きのように購入申込みそのものの限定ではない場
  合は、ここでいう申込みの期間に関する定めがあるときに該当しません。
   また、申込みの撤回や解除に関する事項(いわゆるキャンセルに関する定め)につ
  いては、以前は、商品等の売買契約の場面のみに適用がありましたが、役務提供契約
  に関しても解約に関するトラブルが生じていることから、今回の法改正により、役務
  提供契約についても申込みの撤回や解除に関する事項の記載が義務付けられました(
  特定商取引法第11条第5号)。例えば、通信販売によってシロアリ駆除やエアコン
  掃除のサービスを提供しようとする場合は、その広告にキャンセルに関する定めを記
  載しなければなりません。

 ⑵ 申込段階における表示の義務付け
   今回の改正以前においても、通信販売の申込段階における申込内容の表示に関して
  は、特定商取引法第14条第1項第2号及び省令第16条第1項は「顧客の意に反し
  て契約の申込みをさせようとする行為」があった場合には主務大臣が事業者に対して
  指示を行うことができると定めており、その具体的内容として、顧客がインターネッ
  ト通販において申込をする際に、その内容を容易に確認・訂正できないケースを挙げ
  ていました。
   しかし、今回の改正によって、インターネット通販に限らず、消費者が事業者の定
  める様式により申込内容の確認や意思表示を行う場合は、消費者にとって必要な情報
  を一覧性のある形で表示し、また、不当な表示を防止するために、申込段階において
  一定の事項の表示が義務付けられました(特定商取引法第12条の6第1項)。具体
  的には、葉書で通信販売を申し込む場合は申込葉書に、インターネットで通信販売を
  申し込む場合はいわゆる最終確認画面(その画面内に設けられている申込ボタンをク
  リックすることで契約の申込が完了することになるもの。以下では、まとめて「最終
  確認画面等」といいます)に、特定商取引法第11条第1号から第5号までの事項
  (広告に記載しなければならない事項)の他、販売する商品や提供する役務の分量を
  記載しなければなりません。
   この最終確認画面等での表示について、消費者にとって契約の申込みであることを
  誤信させるような表示や、特定商取引法第11条第1号から第5号に定める契約条件
  を誤信させるような表示は禁止されています(特定商取引法第12条の6第2項)。
  例えば、一見すると無料サンプルの応募であるが、実際には有料の売買契約の申込み
  になっている場合は、消費者にとって契約の申込みであることを誤信させるような表
  示として禁止されます。

 ⑶ 不実の告知の禁止
   通信販売の事業者が消費者による解除や申込の撤回を妨げるために、一定の事由に
  ついて、消費者に不実のことを告げる行為が禁止されました(特定商取引法第13条
  の2)。例えば、ダイエット食品の通信販売において、事業者が、売買契約を解除し
  ようとする消費者に対して、事実に反して「今止めればリバウンドが起こる」などと
  述べることが該当します。

 ⑷ 申込みの意思表示の取消し
   通信販売の最終確認画面等において、不実の記載をすることで消費者を誤認させた
  場合や必要な記載をしないことで消費者を誤認させた場合、また、インターネット通
  販において、情報を送信することが申込みになると気づかせずに申込みをさせた場合
  などにおいて、消費者が申込みを取り消すことができるとされました(特定商取引法
  第15条の4)。
 

3 実務上の注意点
 ⑴ 新たな記載事項
   今回の改正によって、広告及び最終確認画面等における記載事項として、「申込み
  の期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容」が、最終確認画面等におけ
  る記載事項として、販売する商品や提供する役務の「分量」が追加されました。従前
  は記載事項ではなく、今回の改正で初めて記載することになったので、どのように記
  載すればよいか迷う場合があるかもしれません。
   「分量」の表示については、例えば、一定期間中は映画が見放題というような物理
  的な「分量」を概念できない場合に、どのような記載をすべきかが問題となります。
  この点に関し、「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」には
  「販売する商品等の態様に応じてその数量、回数、期間等を消費者が認識しやすい形
  式で表示する必要がある」と記載されていますので、契約期間がいつからいつまでで
  その間は回数の制限なく映画を見ることができる旨を記載することになります。なお
  映画見放題というようなサービスはサブスク契約であることが多いのですが、そのよ
  うな場合は、「分量」そのものではありませんが、解約するまでサービス提供が継続
  する旨、または契約が自動更新される旨を記載する必要があります。
   「申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容」の記載について
  いえば、会社の事業方針として、ある時期にある商品の販売を取りやめることを決め
  たが、消費者にその事実を公表していない場合にも、「申込みの期間に関する定めが
  あるとき」に該当するのかと迷われるかもしれません。ある時期になると消費者が商
  品を購入できなくなることから申込期間が設定されていると解する余地もありそうで
  すが、消費者に対して、期間経過後に商品を購入できなくなると誤認させるような不
  当な表示等を防止するため、正確な記載を義務付けるという法の趣旨に鑑みると、社
  内的に販売の終期を決めただけで対外的に公表していない場合は、消費者に購入でき
  なくなるという誤認が生じることはないので、「申込みの期間に関する定めがあると
  き」に該当しないと解されます。

 ⑵ 最終確認画面等の確認・修正
   今回の改正で最終確認画面等に法定の事項を記載しなければならなくなりました。
  最終確認画面等への記載が義務付けられている事項は全て最終確認画面等に記載しな
  ければならないと誤解されている方もいますが、消費者にとっての分かりやすさを考
  慮し、一部を広告部分に記載し、これを参照させる方式を採ることができます。ただ
  その場合には、参照先のページを記載したり、リンクを張るなど、消費者にとって必
  要事項を容易に認識できるようにしなければなりません。最終確認画面等から全ての
  記載事項を容易に確認できるようになっているか、確認が必要です。
   自社のホームページで通信販売を行っている場合には、特定商取引法に従って最終
  確認画面に必要事項を記載しているか確認し、対応できていない事項があれば自社で
  対応することが可能ですが、他社が構築する通信販売サイトを利用しているような場
  合には、その最終確認画面が特定商取引法に適合しているかを確認し、適合してない
  場合にはそのサービス提供事業者に対して修正を求めなければなりません。このとき
  に、海外のサービス提供事業者で日本の法改正に詳しくない場合やサービス提供事業
  者のシステム改変に時間がかかる場合には思うように修正が進まないので、注意が必
  要です。ただ、そのまま放置すると特定商取引法に違反し、消費者が誤認して申込み
  を行ったこと等を理由に契約の取消等を主張される可能性があります。もし現段階で
  何か不十分な点を見つけられれば、早期に対応することをお勧めします。

以上

執筆者:嶋野 修司

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