コラム

Column

第135回 民法改正と実務対応~⑤契約不適合責任~(後半)

第2 実務への影響
旧法の瑕疵担保責任、新法の契約不適合責任については、いわゆる任意規定と考えられており、従前から契約書において特約が置かれることが通例でした。民法改正後、契約書上どのような論点が問題となりうるか、以下ご説明いたします。

1 「瑕疵」から「契約不適合」への変更
新法では、責任の要件を、「瑕疵」から「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」こと、すなわち「契約不適合」に変更しました。住宅建築関連等の法令で「瑕疵」概念が維持されるような場合を除き、契約書上の文言を「瑕疵」から「契約不適合」等の文言に変更することが考えられます。
契約不適合か否かについては、契約当事者が目的物の「種類、品質又は数量」にどのような意味を付与したのかによって左右されるため、契約の解釈を通じて判断することになります。将来の紛争を防止するため、「種類、品質又は数量」についてはできる限り契約書において特定するべきと思われます。特に「品質」については具体的に規定することが難しい場面も少なくないと思いますが、契約書の冒頭や第1条でよく見られる契約の目的についての条項や、目的物の仕様書等の記載を工夫することが考えられます。

2 買主の救済方法の選択権
買主には救済方法として、追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、解除権が認められています。各請求権の内容や各請求権相互間の関係については上記と重複しますのでここでは説明しませんが、買主の立場からは、これらの請求権を自由に選択できるようにすること、つまり、追完の方法として「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡し」の中から自由に選択できるだけではなく、「買主に不相当な負担を課するものでないとき」に売主に追完方法の選択権を与える新法562条1項但書の適用を排除したり、新法563条1項の「買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないとき」という要件を満たさずとも代金減額請求を可能とすること等が考えられます。
売主の立場からは、逆に各請求権の選択肢や行使の順序を制限すること、つまり、代金減額請求を認めないとか、新法562条1項但書の要件を削除して売主が自由に買主の救済方法を選択できるようにすること等が考えられます。

3 代金減額請求により減額される代金額
代金減額請求により減額される代金額をどのように算定するかは解釈に委ねられていますが、「実際に引き渡された目的物の現に有する価値と契約の内容に適合していたならば目的物が有していたであろう価値とを比較して、その割合を代金額に乗じたもの」が想定されています。また、この価値の基準時についても解釈に委ねられていますが、「『基準時は契約時』」とするのが相当である」と考えられています(以上につき、法務省の立案担当者による解説書である「一問一答民法(債権関係)改正」(筒井健夫・村松秀樹編著)279頁)。
契約上、代金減額請求を許容するのであれば、紛争防止のため、例えば、契約書でこれらの点について、すなわち、実際に引き渡された目的物の現に有する価値と契約の内容に適合していたならば目的物が有していたであろう価値とを比較してその割合を代金額に乗じたものを減額後の代金額とすることや、価値の基準時を契約時とすることを規定することが考えられます。

4 帰責事由
買主の帰責事由に基づき契約不適合が生じた場合、買主救済のための各請求はできないことになりますが、買主の立場からは、故意または重過失がない場合は買主救済のための各請求を可能とする等、要件を緩和することが考えられます。
また、新法によれば、売主に帰責事由がある場合に限って売主は損害賠償責任を負いますが、旧法のように帰責事由がなくても売主に損害賠償責任を負わせるのであれば、その旨を明記することも考えられます。

5 期間制限
担保責任を追及することができる期間については、売主や請負人の立場からは、早期の権利確定や債権管理の負担軽減の観点から、旧法の請負に関する瑕疵担保責任の規定のように、引渡しないし仕事の完成の時から1年とすることも考えられます。なお、引渡しないし仕事の完成の時から1年とするか、あるいは知った時から1年とするかで、売主・請負人の負担ないし買主・発注者の権利保護の観点から大きな差が生じます。この点、請負に関して、知った時から1年とするのであれば請負人の負担が大きくなるため、請負人側では、そのような契約条件であれば代金額を増額するという動きもあるようです。
また、商人間の売買に関して商法526条が適用されますが、企業間の売買契約においては、検査合格品のみ引渡しとして受領し、不合格品については目的物の修補や代替物の引渡しを求め、不足があれば不足分の引渡しを求め、不合格品のままでも使用可能であれば代金減額を求め、合格品でも瑕疵が見つかれば同様の請求を行うというような、商法526条に近い内容の規定を契約書上よく見かけます。従前から契約書上にこのような規定がある場合は大幅な修正は不要かもしれませんが、買主の救済方法についての記載が不十分ではないか、期間制限の規定が不利ではないか、新法が施行されるこのタイミングで改めて確認をすることが望ましいといえます。

第3 さいごに
今回で民法改正の重要トピックスを解説するシリーズは終了となります。
改正内容にとどまらず、実務的な観点からどのような点に注意すべきかについてもご説明しましたが、実際に皆さまが民法改正に伴い直面する法的問題は多岐に渡りますし、一律の対応は困難であってケースバイケースで検討せざるを得ないこともあろうかと思います。
もし民法改正について(もちろん民法改正に限りませんが)ご不明な点がありましたら、いつでも弊事務所にご相談いただければと思います。
以上