色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第122回 終活シリーズ Part3  ペットについて

2018/12/21

 犬や猫などのペット[1]を家族同様に可愛がっておられる方で、ご自身が死亡した後、そのペットの行く末が心配という方は、結構多いようです。
 アメリカでは、犬が遺産を相続したことがニュースになっていたようですが、日本では相続できるのでしょうか。
 残念ながら、我が国では、動物は相続人[2]になれません。それでは、死後のペットの飼育はどのようにすべきでしょうか。
 まず、ペットの飼育を誰かに委ねなければなりません。そのためには費用も掛かりますから、財産の一部を譲渡する必要があります。
 その方法としてどのようなものがあるでしょうか。
 ペットの飼育を依頼するという点から考えると、準委任契約を締結することが考えられますが、財産の譲渡という面から考えますと、次のような3種類の方法が考えられると思います。
 
1 死因贈与契約(民法554条、553条)
 財産の贈与を受けた者が贈与者のペットを飼育するという負担を債務として負うことになる契約です。契約ですから生前に相手方と締結する必要があります。
 しかし、その効力は、贈与者が死亡したときに発生するというものです。
 この契約では、贈与者が死亡すれば財産は受贈者に帰属することになりますから、財産を取得しながらペットの飼育を行わないという不届きな者もいないとは限りません。
 そこで、このような場合には、受贈者がペットの飼育という債務を誠実に履行しているか否かをチェックさせるために、この契約のなかで遺言執行者を選任[3]することができます。遺言執行者は、贈与者の意思の実現を任務とし、その執行に必要な一切の行為をする権限を有するので、受贈者がペットの飼育という債務を誠実に履行していない場合には、贈与契約の解除ができるものとされています。
 未成年者と破産者以外は遺言執行者に選任できますが、後々のことを考慮すると、弁護士等の専門家を選任することが望ましいと思います。
 
2 負担付き遺贈(民法1002条)
 これは財産の遺贈を受けた者に被相続人のペットを飼育するという負担を負わせる内容の遺言です。1の契約とは異なり、遺言ですから単独で定めることができます。
 しかし、被相続人の一方的な遺言のため、ペットの飼育を行いたくないと考える受遺者は遺贈の放棄[4]をすることができます。この点がネックです。ですから、前もって受贈者によく話をしておくことが必要です。もちろん、遺言であるため、1の場合と同様に遺言執行者を選任して、受遺者の行為を監督させることができます。
 
3 信託(信託法3条)
 受託者に財産を譲渡し、その財産をペットの飼育のために活用するように信託する方法です。これには契約による場合(3条1号)と遺言による場合(3条2号)があります。ペット信託[5]ということで最近よく取り上げられるようになりました。
 一般的には、財産を譲り受けて管理する受託者とペットの飼育者が異なることが多く、受託者が飼育者に対して、飼育に必要な費用などを毎月支出することが多いようです。
 この場合には、譲渡された財産は受託者自身の財産とは区別されて管理されることになりますから、1,2の場合に比べて安全ですし、受託者、飼育者の行為を監督するため、信託管理人を選任することもできます。ただ、ペットが死亡した場合の財産の処理等、細かく定める必要がありますし、受託者の報酬などが高額になり得るという問題もあります。
 
 以上いずれの場合にも長短がありますが、個人であれ、団体であれ、ペットの飼育を信頼して委ねられる方を探されることがまず必要でしょうし、どの方法を選ぶにしても、税金や相続人との紛争処理等の面から弁護士に相談されることをお勧め致します。

以上


[1] 一般社団法人ペットフード協会の平成29年全国犬猫飼育実態調査によると、犬の飼育頭数は約892万頭、猫の飼育頭数は約953万頭で、犬の飼育頭数は年々減少傾向にあり、平成29年に猫が上回ったようです。

[2]  相続人は、人に限られています(民法886条ないし890条)。

[3]  遺贈に関する規定が準用されます(民法554条)。

[4]  民法986条

[5]  「ペット信託」は、商標登録されています。登録番号5553280、6039461

 

執筆者:中村 隆次

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