色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第113回 終活シリーズ Part 1 遺言すべきはこんな人

2018/02/01

 少子高齢化の影響や相続税の増税などもあって、相続・遺言に対する関心が高まっており、公正証書遺言の作成件数[1]は、平成26年以来毎年10万件を超え、また、任意後見契約公正証書の作成件数[2]も、1万件を超えています。
 そこでどのような場合、また、どのような人が遺言を作成すべきか、検討してみましょう。

1 法定相続人がいない場合
 財産を有しながら相続人がいない場合というのは現実には考え難いですが、法定相続人は一定範囲の親族(親、子、孫、兄弟姉妹、甥、姪、配偶者)に限定[3]されているため、そのような親族がいない場合には、最終的には、遺産はすべて国庫に帰属[4]することになってしまいます。したがって、第三者や甥や姪以外の身寄りなどに遺産を贈与(遺贈)したいと考えるような場合には、遺言書[5]の作成をお勧めします。この場合は遺留分が問題となりませんから、自由に内容を定めることができます。

2 離婚歴のある場合
 先妻には相続権はありませんが、先妻との間の子供には相続権があります。このような場合には、再婚した配偶者、あるいはその間の子供との遺産分割協議が円満に行われることは期待できないことが多いように思います。このような場合には、是非、遺言書を作成するべきです。特定の財産を相続させたり[6]、相続分を増減[7]することもできます。但し、各相続人の遺留分を侵害しないように配慮[8]することが必要です。

3 配偶者が内縁関係の場合
 配偶者が内縁関係の場合、相続権がありません[9]。このような場合には、遺言がないと他の相続人が全財産を相続することになってしまいます。内縁の配偶者に遺産を残したいと考えるのであれば、必ず、遺言書を作成すべきです。但し、遺留分の関係から限度[10]があります。

4 亡くなった長男の家族と同居しているような場合
 長男の子供(孫)には相続権はありますが、長男の妻には相続権がありません。従って、面倒を見てくれた長男の妻に遺産を残したいのであれば、遺言書を作成しましょう。遺留分については3と同じです。

5 別居中や離婚訴訟が係属している場合
 離婚訴訟の係属中に当事者が死亡すると、その訴訟は当然終了[11]します。そうなると、離婚は成立しないことになりますから、相手方に相続権が発生することになります。別居中も同様です。従って、相手方の相続分を減らしたいのであれば、遺言書を作成するべきです[12]。遺留分については3と同じです。

6 子供がいない場合
 子供はいないが兄弟姉妹や甥、姪がいる場合、配偶者と他の相続人が相続することになります。このような場合には、配偶者が全財産を相続できなくなります。しかし、兄弟姉妹や甥、姪には、遺留分がありません[13]から、遺言をすれば配偶者に全財産を相続させることができるでしょう。

7 家業や同族会社を経営している場合
 遺言がないと、事業用の財産や同族会社の株式もすべて遺産分割の対象となってしまいます。その結果によっては、事業を承継させたいと思う相続人が事業を継げなくなるかも知れません。このような場合には、遺言書でこれらの財産を相続させる者を明示すべきです。勿論、遺留分には配慮が必要です。

8 その他
 葬儀や埋葬、墓地などについての希望、遺品等の処分、世話になった人々へのお礼や感謝の気持ちの表明の仕方、ペットに関する指示など、自己の意思や考えも遺言で表明しておくことできます。

 いずれにしても、相続人間の仲[14]が悪いなど、遺産分割協議が円満に行われないと思われるような場合には、遺言書を作成すべきです。他に、遺言で定められる場合として多いのは、認知、相続人の廃除、祭祀の承継者の指定、相続分の指定、特別受益者の元戻し免除、遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止などです。

以上

[1]  日本公証人連合会のHPより

[2]  上記日本公証人連合会のHPより

[3]  民法887条、889条、890条

[4]  民法959条

[5]  遺言の方式や効力については、遺産分割をめぐって Part 2(法律コラム第81回) 参照

[6]  相続させる遺言については、遺産分割をめぐって Part 2(前同) 参照

[7]  民法902条

[8]  民法902条ただし書き

[9]  公営住宅の居住権については、遺産分割をめぐって Part 3(法律コラム第84回) 参照

[10]  子供の遺留分は2分の1、両親は3分の1ですが、兄弟姉妹は遺留分がありません。

[11]  人事訴訟法27条

[12]  他に、推定相続人の廃除の手続(民法892条、893条)がある。

[13]  民法1028条本文

[14]  相続人間のみではなく、相続人の各配偶者も含めて考えるべきです。

執筆者:中村 隆次

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