色川法律事務所Irokawa Law Office

法律コラム

第106回 遺産分割をめぐって Part6 遺産分割の方法について

2017/08/14

1 各相続人の具体的相続分率[1]が確定すると、具体的に遺産をどのように分けるかが問題となります。分割手続としては、当事者の任意の協議による場合、遺産分割調停による場合、審判による場合があります。

2 遺産分割は、遺産に属する物や権利の種類・性質、各相続人の年齢・職業、心身の状態、生活の状況などを総合考慮して行われます[2]
 例えば、遺産が農地のような場合には、農業の後継者が単独で取得することになるでしょうし、年少者や病人の場合には、現物よりも金銭での分割が望ましいことも考えられます。遺産の取得を希望する相続人が一人であれば,当該相続人に取得させることが合理的ですし、全員が金銭での取得を希望すれば遺産を売却して金銭で分割することが行われます。
 このように分割の方法には、現物分割、代償分割、換価分割、その他があります。

3 現物分割は,遺産分割の原則的な分割方法です[3]
 土地を相続分率に応じて分割して取得するケースが主なものですが、このような場合には、土地全体を実測し、それぞれ取得する土地の分筆図面を作成した上で、調停調書に添付することになります。
 株式の場合は、1株未満に分割することはできません[4]から、注意を要します。また、個人事業の経営者が亡くなった場合には、株式の分割は会社の経営権とも密接に絡みますので、事業の経営権とは別個に取り扱うことが多いようです。

4 現物分割ができない特別の事情がある場合には、一部の相続人に財産を取得させ、他の相続人に対する債務を負担させるという代償分割[5]が行われます。この特別の事情は、現物分割が不可能な場合、現物分割では経済的価値が著しく損なわれるような場合、特定の相続人の占有や利用を保護する必要がある場合、当事者間に合意が成立している場合などが考えられます。
 例えば、面積が狭小な土地の現物分割は経済的価値が減少しますし、農業経営や家業の継続に必要な財産などは,後継者に相続させるのが相当です。
 ただ、債務を負担することになる相続人は、原則として直ちに代償金を支払うことが必要となるため[6]、現実には申出がないと代償分割は行われませんし、資力の疎明[7]が求められることもあります。
 代償物が金銭の場合、金銭の交付を受けた相続人は、その額が相続税の課税価額に算入[8]され、金銭を交付した相続人は、その額が相続税の課税価額から控除[9]できます。しかし、代償物が金銭以外の資産の場合、代物弁済とみられて、その代償債務額について、交付した相続人には、譲渡所得税が課税[10]されますので、注意を要します。

5 換価分割は、遺産を売却などで換価し、その代金を相続分率に応じて分配する方法です。売却方法は、競売と任意売却があります。裁判所の審判[11]によるよりも、当事者間で任意に売却することが現実には多いですが、売却期限、売却担当者、控除すべき手続費用などについて中間合意(一部調停)をして実施することもあります。
 換価分割の場合に注意を要するのは、全員に譲渡所得税が課税[12]されることです。遺産を譲渡してその代金を相続人間で分配すると考えられるためです。

6 その他の方法として、遺産の全部又は一部を相続人らの共有とする方法があります。前述の3つの方法によることが困難な場合、当事者が共有による分割を希望しており、それが不当とは認められない例外的な場合に行われます。ただ、その後に共有関係を解消するには共有物分割訴訟によらなければなりません。

7 なお、遺産分割によって不動産を取得した場合、調停調書正本ないし審判書正本[13]を添付して、単独で、相続登記ないし持分移転登記申請を行うことができます。

以上


[1]  法定相続分に特別受益や寄与分による修正を行った後の相続分率

[2]  民法906条

[3]  最高裁昭和30年5月31日判例・民集9巻6号793頁

[4]  最高裁平成12年7月11日判決・民集54巻6号1886頁

[5]  家事事件手続法195条

[6]  最高裁判決平成12年9月7日家裁月報54巻6号66頁

[7]  預金の残高証明など

[8]  相続税基本通達11の2-9(1)

[9]  相続税基本通達11の2-9(2)

[10]  所得税基本通達33-1の5,38-7(2)

[11]  家事事件手続法194条1項(競売)、2項(任意売却)

[12]  相続税の申告期限から3年以内に売却した場合は、相続税相当額を譲渡資産の取得費に加算できます(租税特別措置法39条)。

[13]  確定証明書が必要です。

執筆者:中村 隆次

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